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2006年11月25日 (土)

兵は拙速を貴ぶ

先週は「完璧」の由来についての記事を書きました。
今週は「完璧」を目指すのではなく短期決戦、スピードを重視せよ!ということについて考えてみます。

スピード経営がもてはやされている現在ですが、既に創業時からスピード重視の経営、社是を掲げて好業績を上げ続けている企業があります。

読者の多くがご存知であると思われる、その企業の社是とは「巧遅は拙速に如かず」というものでした。(現在はなぜか、より分かり易い社是、多くの企業、評論家、コンサルタントが声高に主張していることばに変更になっているようなので敢えて過去形にしました。)

これは「兵は拙速を貴ぶに。未だ巧遅なるを聞かず」の言葉を見識のある経営者が社是としてワンセンテンスに要約したものである、と筆者は考えるのです。

その出典を『孫氏』(村山 孚、北川 衞、村田 宏男 共訳  経営思潮研究会)から、以下に引用してみます。

少々長いのですがこれが面白く、しかもこの「作戦篇」詳しくはこちらの解説は44年前に書かれているのですが、現在でも充分示唆に富んでいる、妙を得ていると思われるのでご容赦願います。(この一文は皆様に紹介すると共に自己への戒め、自戒として敢えて長文を引用しました。自分勝手!?お許しください。)

有名な「兵は拙速を貴ぶ」ということばが日本ではじめて使われたのは、

八世紀の末、桓武天皇の勅書である。奥州に進撃した蝦夷討伐軍が1ヶ月以上に及んでなお戦果があがらず、てこずっているのを非難された勅書の中に「夫兵貴拙速。未聞巧遅」(夫(そ)れ、兵(筆者注:戦争)は拙速を貴(たっと)ぶ。未だ巧遅なるを聞かず」とある。これが孫子の「兵聞拙速。未覩功之久」(兵は拙速を聞き、未だ功の久しきを覩(み)ず)の引用であることは明らかだが、孫子の原文よりわかりやすいために、もっぱらその文句が人口に膾炙(筆者注:かいしゃ。「膾」なまずと「炙」あぶり肉。ともに美味の代表。人口に膾炙するとは人々の口にのぼり、もてはやされること)するようになったのである。

なぜ巧遅より拙速がよいか?もちろん最もよいのは巧速であるにきまっている。しかしいたずらに功を追っていては遅になるのは当然だ。巧であっても長くかかることのマイナスと、拙であっても短期に決することのプラスを計算した場合、後者の方がプラスが大きいとしたのである。

拙速には二つの目的がある。一つは戦争は膨大な経費と危険を伴うものであり、これを避けて最小限の犠牲で勝つためには拙速がよいということである。

もう一つはエネルギーを爆発させるためには、短期間に集中した方が効果が大きいということである。端的な例をあげよう。いつも締切りまぎわでなければ仕事をしないことで有名な作家のことばがある。「ぼくは何もわざわざなまけているのではない。時間があると反って発想がとりとめもなくなるのだ。締切りという限界が迫っていることによって、精神が集中的に緊張し、しまった作品ができるのだ」と。たしかに一面の真理であろう。

時は金なりというが、時間はそれが経過することにだけ意味があるのではない。時間の経過の中で何が行われるのかということに価値があるのである。つまり、時間は使い方によって金にもなれば泥にもなる。この使い方がむずかしい。よほどの努力家でないかぎり泥にしてしまう場合が多いだろう。聖人ですら「少年老い易く学成り難し」と嘆じているではないか。そうであるならば、むしろ短期間というワクの中で集中する方が凡人にとっては、やりやすいということになる。

もちろん「拙速」の速はプラスだが拙はマイナスである。これを計量し危険率最小の範囲で最大の利益率をねらうのは、最もオプティマルな(筆者注:最善の)方法である。危険率最大で最大の利益率をねらうのはイチかバチかの場合である。

ナポレオン、信長、秀吉、家康など、古今の名将はみなこの拙速の大家である。

<後略>
孫子の「兵は拙速を聞き、未だ巧の久しきを覩(み)ず」。
戦争は多少不完全でもスピ-ドを重視した方が良い。長期の戦争をして国家に利益のあった例がない。戦上手は短期間に戦争の目的を達成するものだ。

と、いう考えが、桓武天皇の勅書により、「夫れ兵は拙速を貴ぶに、未だ巧遅なるを聞かず」に転じて、商売上手は素早く営業目的を達成すべきだ。
少々不完全であっても、完璧を目指さなくても、良いではないか。お客様のニーズにスピードでお応えしよう!スピード重視の経営をしよう。と、いう“思い”が、「巧遅は拙速に如かず」の社是になった。古典に造詣の深い経営者だからこそ気付いたことだと思いました。

また、この企業の強さの秘密は社員の教育方針にも特筆すべきものがあります。

各支店には独身寮が設置され、その独身寮は当該支店長とご妻女が管理されている。すなわち、寝食をともにされている。公私共に各支店長とそのご家族が若い独身者に身を持って教育を施されている。また、若い社員からも学び、気付きを得てともに育つ、共育を実践しているのです。

したがって、良好なコミュニケーションが生産性の向上、意思決定、行動のスピードアップに寄与しているものと考えます。

古典を原点に人を財産と考え、コミュニケーションを重視してスピード経営を実践しているところに好業績体質を支えている大きな要因があるものと思いました。

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