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2007年2月25日 (日)

轍鮒の急

轍鮒(てっぷ)とは「新字源」によると、「困窮している人のたとえ」。[荘・外物]とありました。

それで、『荘子雑篇・上解説ページへ福永光司(著) 中国古典選16 朝日新聞社 昭和53年11月発行 ¥400)の「外物篇」解説ページへを見てみると、「轍(わだち)の鮒(ふな)」の寓話(ぐうわ。たとえ話)として有名な壮周(そうしゅう。荘子と監河侯(かんかこう)との問答とあります。
そこで、同書の解説から引用して要約すると、

荘周は家が貧しかったので、あるとき粟(ぞく。穀物)を借りに監河侯(魏の文侯)の所に出かけた。すると監河侯は彼の願いを聞いて言った。、
「よろしい!そのうち領地から税金が入ったら君に黄金300斤(きん)を貸してあげよう。どうだね」と。

それに対して荘周はむっと気色ばんで答えた。
「私は昨日ここに来るとき、途中で何ものかに呼び止められました」と直接、王の言葉に返事をする代わりに「.轍鮒の急」の話を始めます。

あたりを見廻しますと轍の水溜りに1匹の鮒がいるのです。そこで、その鮒、声の主に「子(きみ)は何する者ぞ!?」とたずねますと、「私は東海の海神の召使です。あなたは私の命を助けてくれるほんの数升の水をお持ちではないでしょうか?」と訊いてくるので

よろしい!私はこれから南方の呉越(ごえつ)の王を尋ねて旅行をするので、そこに着いたら、揚子江の水をくみ上げて君を迎えてあげよう。どうだね。」と答えると、鮒は途端にむっと気色ばんで応えました。

「私は今、常におる所、すなわち水から離れてもがいているところで、安住の地さえありません。ほんの数升の水を恵んでもらえれば命がつなげるのです。あなたがそんな悠長なことをおっしゃるなら、いっそこの私を乾物屋の店先で探した方が早手回しというものです」。

とありました。

実は、この荘周に似た体験をコーチングのコーチとして、またコーチングを受ける立場、すなわちクライアントの立場として味わったことがあります。

そこで、その体験談を両方の立場からお話しますと、
まず、クライアントとしての立場からは、新たな取り組みに行き詰ったとき、安易にコーチにたずねると、基礎から学んで外堀を埋めて対応する助言、情報提供をいただきました。
これは、自分で考えて学ばないと身に付かないという教えかな?と思いました。

と、同時にベストセラーになった『ザ・ゴール』解説ページへにも出てくる言葉、すなわち教授が主人公であるアレックスに「もっと自分自身で考えるようにしなければ駄目だ。事あるごとに私の助けを求めていては駄目だ。いつも人を頼るようになる」。
と、自分でよく考える必要性と知りたい得たい情報を明確にして、具体的な質問をすることの大切について述べている件(くだり)を思い出しました。

それは、「教えない、アドバイスをしない」、「相手に考えさせる」、「自分でオプション(選択肢)を見つけさせる」。すなわち、「クライアント自らが情報を取りに行って問題・課題を解決する」。行き詰ったら視点を変えてみる。自ら考えて行動する習慣を身に付ける。そのためにコーチは聞く、視点を変える質問をする。というコーチングの教えと一致している。

これは、コーチングの基本的な考えで重要な部分ですが、コーチの立場からはいとも簡単なことであっても、知識が乏しく時間との競争を展開しているクライアントの立場からすれば至難のことであったりもする。

クライアントとしてそんな体験をしたことにより、コーチとしての立場からの体験、すなわちクライアントさんが抱いたであろう想いが脳裏に浮かんできた。

それは、資格試験に挑戦したいのですが、専門外ゆえに必ずしも基礎知識が充分であるとは言い難いクライアントさんのお話で、目前に迫ってくる受験に向けて学習をしているのですが捗捗(はかばか)しくない。

そんな状況のクライアントさんから相談を受けたとき、「以前にも申し上げたとおり、この基本的な考えを学ぶ必要があります。それが理解できればこの問題は楽に解けるのですが如何でしょうか?」と、情報提供をしました。

それはクライアントさんにすれば、私の説明は正(まさ)しく「轍鮒の急」の如き話であって、今の現状を何とかしたい想いで来たのであるから、核心を付いた一言が欲しい!
今更、このときになって基礎から学んでいたのでは間に合うはずがない!?

そこで、コーチは味方する。サポートすると言っておきながら、ちっとも当てにならない!との不安感と不信感を抱いたんだな!?
それで声にも顔にも張りがなくなったんだな?と思った。

でも、彼はコーチングの期間が終了する、すなわち試験の前日には「大丈夫です、合格します!」と、水を得た魚の如く、明るく元気に宣言してくれて結果もその通りになった。

然らば、緊急の水と追加の水が上手く届いた!?
それが何だったのか?
どの一言、どの質問、どの情報提供が効果的であったのか!?知りたい気もするのですが、、、、、、。

今回の体験を通してコーチとしてクライアントさんとかかわる場合、人は皆違う。その人、そのタイプにあった対応、質問、情報提供、その人のためになるものを心がけなければなならないというコーチングの原則である個別対応の大切さを実感した。

と、ともにそれ以外の何か重要なものがあるのではないか?ということをも考えるようになった。

そんなとき、たまたま見た新聞にあるカウンセラーの体験談、コラムが掲載されていた。そこには

もし、カウンセラーの仕事の中で、たった1つだけ大切な力があるとしたら、それは何だと思う?
<中略>
カウンセラーという職業を選んだ人が、自分の中に育(はぐく)まなければならない資質が1つだけあるとすれば、それは「自分の弱さをいとおしむ」力かも知れない。これからの日本では、ますます難しくなることかもしれないけれど、、、、」

とあった。

それを見て今回の両体験から、コーチとして自分の中に育(はぐく)まなければならない資質を1つだけ求められるとしたら、それは何であるか?を考えるきっかけになった。

<ここだけの話>
ある方が数人のコーチの前で、「一番売れているコーチ、素晴らしいといわれるコーチはどんな人で、どんなことができるのですか?何処が違うのですか?」と質問された。

それに対してあるコーチのお応えは、自分に合ったコーチ、自分が信じることのできるコーチであれば良いのでは!?という、一般的なお答えでした。

ここだけの話(私見)ですが、有能なコーチは100以上もあるというスキルの中から相手を知って、適切なタイミングで相手のためになる適切な質問をすることであると考えるのですが、人は時間との競争をし始めると焦りで周囲が見えなくなります。

そんな時、コーチは視点を変える質問をします。これがクライアントさんの求めているもの、欲しているもの、方向、情報と違うとき、それこそ「むっとして、気色ばんで」、「そんなんじゃない!求めているものと違う!もういいです!」の一言で関係が終わるか?無言で疎遠になるかも?

有能なコーチといわれる人はクライアントさんにそのような思い、気持ちを起させることなく、核心を突いた質問とツールを駆使して、より早く、より確実に目標(ゴール)まで連れて行ってくれる。

そんなスキルとツールを兼ね備え、人間力にも優れたスーパーコーチ像を求められてのご質問であったかと存じますが、果たして幾人実在するのでしょうか?

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