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2009年3月26日 (木)

「可使由、不可使知」解説ページ

Yukiwarisou0903154 画像は秋田の友人からのプレゼントで、
雪割り草です。

 「○○です。」
「観桜会をやるらしいな~」
「何で俺に知らせてくれんのや」
「陸続きなのに水臭い!」
「俺とおまえのなかはそんな間柄か?」
と、40数年来会ったことはもちろん、声を聞いたこともない朋友がいう。

 こちらは素面、
だが、彼は一杯入っているのか、いやっ、二杯か(笑)
かなり執拗にからんでくる。

 で、やんわりと逃げ言葉に使ったのが、タイトルをもじっての一言。
具体的に、どのようにいったかといえば、

「会長から、『おまえが宣伝・喧伝するから大規模になってしもうた』
『頼むからあんまりみんなに言わんといて』
といわれているので、わしは誰にも言うてないぞ」
「昔から可使寄、不可使知(よらしむべし。しらしむべからず)」というやろ」

 「ところで、あんた誰から聞いた?」
と、訊けば、その出所を必死に繕い始める朋友。

 おーぉー、
そういえば、40数年前の彼もそうだったかなー(笑)

などと遠い昔を振り返る前に、タイトルの語の正しい言葉とその意味について、『論語』 吉川幸次郎(著) 中国古典選3 朝日文庫の「泰伯(たいはく)第八」からの引用を主に、訓読(読下し文)とその現代訳、ならびに著者の解説を、読みやすく、わかりやすい形に加工してご紹介します。

 まずは、タイトルの条の訓読、すなわち読下し文です。

(し)曰(い)わく、
(たみ)は之(こ)れに由(よ)らしむ可(べ)し。
(こ)れを知(し)らしむ可(べ)べからず。

 次に、その現代訳です。

人民というものは、政府の施政方針に、従わせるだけでよろしい。
何ゆえにそうした施政方針をとるか、その理由を説明する必要はない。

 続いて、吉川博士の解説ですが、
上記の現代訳は、「その理由を説明する必要はない」の後が、「。」(句点)ではなく「、」(読点)である。その読点に続いて、

・と普通に解されており、儒家の政治思想の封建制を示すとされる条である。事実また、漢の鄭玄(じょうげん)の注などは、そのように解している。

・「可使由之」の由は、「従う也」であるとし、また「民」の字を、同じ子音で、暗を意味する「冥(めい)」の字に、おきかえさえもしている。そうして民は冥(くら)いものであるゆえに、「正道を以って之れに教うれば、必ず従わん。如(も)し其(そ)の本来を知らば、則(すなわ)ち暴なる者は或(ある)いは軽んじて行わず」。これが新出の写本によって読まれる鄭玄(じょうげん)の説である。

・しかし、他の注釈の説は、必ずしもそうではない。
まず何晏(かあん)の古注によれば、
人間の法則というものに、人民は知らず識(し)らずに従っている。だから、人民に、それに従わせることは可能であるが、知らず識(し)らずにやっていることの理由を、はっきり自覚させることは、むつかしい。

・また、朱子の新注によれば、
政府の施政方針は、人民の全部が、その理由を知ることが理想であるが、それはななかなかむつかしい。それに随順させることはできても、一一に説明することはむつかしい
と、理想と現実の距離をなげいた語とし、鄭玄(じょうげん)のような説は、「聖人の心」ではないとして、しりぞけている。

・さらにまた仁斎(じんさい)には、
君主は人民のために、その経由利用すべき文化施設を整備すべきだが、かくすることの恩恵を知れと、おしつけてはなるぬとする説がある。

 ほぉー、
この条も正(まさ)に奇説のコンクール。

 では、他の書籍は?
と思い、『論語の活学』 安岡正篤(述) プレジデント社を見た。

 そこには、さる代議士が現代訳どおりの解釈(鄭玄(じょうげん)の説)を言い、得意げに演説したのを聞いていた安岡先生が、後でその間違いを指摘したとあり、次のように続けておられる。

<民は之を知らしむべからず>を、「民衆に知らせてはいけない」と解釈するから間違ってくるので、第一、天下のために、人間を救うために、生涯を捧げた孔子がそういうことを言うはずがない。

民衆というものは、常に自分に都合のいい、その場その場のことばかりを求めておるので、本当のことだとか、十年・百年の計だとかいうようなことはわからない。したがってそれを理解させることはなかなかできないことである。

そこで「とにかく訳はわからぬが、あの人のすることだから俺はついて行くのだ」というふうに民衆が尊敬し、信頼するようにせよということで、
由(よ)しむべしの“べし”は命令の“べし”であるが、知らしむべしの“べし”の方は可能・不可能の“べし”である。

<後略>

 おぉー、
なるほど!

 私が意図的に、もじって使用した冒頭の言葉はともかくとして、
安岡正篤翁の解釈は朱子のそれに近い。

そして、また私もそのように信じて、
「燕雀(えんじゃく)いづくんぞ、鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」などと嘯(うそぶ)きながら30数年間の企業生活を過ごしていた。

 しかし、そんな思いや考え、思考回路は、いつのまにか化石的(天然記念物的?)人種と評される世と化していた。

 その結果、それが通じぬ世界、すなわち現実に遭遇して、
一から十まで、一一に説明することはむつかしいことではあるが、
その難しいことを一一説明することの大切さを知ることになるのであった!

という気づきと体験あれこれはまた来週までお待ちください。

 では、あなたにお伺いします。
あなたは、一一に説明することはむつかしいことであることを知りつつも、それを実践するために、どんな具体的解決策・手法をお使いですか?

<「可使由、不可使知(よらしむべし。しらしむべからず)」解説ページ 附録>

 『論語の活学』 安岡正篤(述) プレジデント社には、「公冶長(こうやちょう)第五」にある、孔子が寗武子(ねいぶし)を評していった言葉、「其の知は及ぶべきなり、其の愚は及ぶべからざるなり」の意味について、
「その馬鹿さ加減が話にならぬ」というのは誤用であって、本当の意味は、「寗武子(ねいぶし)という人は、人の真似のできない馬鹿になれた人だ」という意味の賛嘆の言葉であると安岡正篤翁は述べておられる。そして、

人間にとって知は、もちろん本来は望ましいことであるけれども、人間性の本質の問題から言うならば、それほど大事ではない。むしろ大いに警戒を要することである。
<中略>
このような味わいの深い語、真理の語も、往々にして浅解することが多い、

と続けた後、その事例として、
「民は之を由(よ)らしむべし、之れを知らしむべからず」という本文中の条について、次のように説いておられる。

大抵(たいてい)はこれを、「民衆というものは、服従させておけばよいので、知らせてはいけない、智慧をつけてはいけない」と全く逆の解釈をしておる。
<中略>
いやしくも何千年来、聖人と言われ、人類の師と仰がれてきた人が、「民衆というものは、服従させておけばよい、智慧をつけてはいけない」というような馬鹿なことを言うかどうか、少し考えてみればわかるはずであります。

要するに「民は之を由(よ)しむべし」とは、「まず以て民衆を信頼させよ、政治というもの、政治家というものは、何より民衆の信頼が第一だ」ということで、この場合の「べし」は「……せしめよ」という命令の「べし」である。また、こ、「之を知らしむべからず」の「べし」は、可能・不可能の「べし」で、知らせることはできない、理解させることは難しいという意味である。

民衆というものはみな、自己自身の欲望だの、目先の利害だのに捕らえられて、本質的なことや遠大なことはわからない、個々の利害を離れた全体というようなことは考えない。したがってそれを理解させるということは、ほとんど不可能に近い。できるだけ理解させるようにしなければならぬことは言うまでもないけれども、それはできない相談である。

そこで、とりあえず民衆が、何だかよくわからぬけれども、あの人の言うことだから間違いなかろう、自分はあの人を信頼してついてゆくのだ、というふうに持ってゆくのが政治だ――と、これは政治家に与えた教訓であって、決して民衆に加えた批評ではない。

人間というもの、民衆というものの実情は、確かにそのとおりでありまして、今日も二千年前の孔子の時代と少しも変わらない。この語がそのまま当てはまる

と結んでおられる。

 だとしたらこの「可使由(よらしむべし)、不可使知(しらしむべからず)
という言葉は千古不易の箴言(しんげん)か?

 しかし、当世は、「説明責任を果たしていない!」
と、とかくマスコミを始めとした外野席は喧しい。

が、いざ、自分がその当事者となれば……。

 これも千古不易の現象の1つか。
否、現代の悪しき潮流か。

 もし、この世に安岡先生がご存命ならば、
これらの風潮について何と仰るか、お聞きしたいものであるが……。

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