「三軍」解説ページ
とある地方紙の6月3日付け一面コラム
「三軍も帥を奪うべし、匹夫(ひっぷ)も志を奪うべからず」は論語の言葉。
大軍を率いる武将は相手の地位や権力を奪えても、志までは奪えない。
そんな意味で、心の自由を束縛できないたとえだ。ちょうど民主主義をの勘所を言い表している。
こんな教えを生んだ中国なのに、民主化要求を武力弾圧したうえ、
云々と書かれていた。
このコラムを見た私、
んんっ、
これは孟子の好む言葉(いいそうなことば)?
後で論語の事項索引を見てみようー、
と思いながら放置していた。
ちなみに、どこかのどなたかが、
「後でやるとは、やらないということである」、
といっていたが、蓋(けだ)し名言である(汗;)
それから2日後、6月5日付の同紙の一面コラムは、
「テレビのチャンネルを一巡させると、どこかでクイズ番組を目にする。」と始まり、その後半部分には次のような記述があった。
「三軍も帥を奪うべし、匹夫も志を奪うべからず」の前半部分を勘違いしていた。
大軍を統率する武将の権力でも奪われることがあるとの意味だった。
読者から指摘をいただいた。
批判やチェックは時代を築く要だ。
民衆の志が権力を是とすることもあれば、三くだり半を突きつける場合もある。
民主主義の普遍的常識だ。
志を高く、権力の在りようを注視したい。
ただし高をくくらずに。
んんっ、
これで、この件は一件落着?
謝罪やお詫びも再発防止のことば(記事。記載・掲載)も見当たらない。
他人のことに関してはことばを尽くして糾弾するのに!
といえば、これは私の批判、判断、解釈のことばとも受け取れる。
しかし、この地方紙は、権力や政治のあり方を批判しているのに!
といえば、これは客観的事実?
「当欄でも、権力や政治のあり方を批判する機会が多い。」と掲載されているゆえに。
そんなこんなで、孔子のこの言葉を、『論語上』 吉川幸次郎(著) 中国古典選3 朝日文庫ではどのように記載されているか? ということで、「子罕第九」からの引用を主に、訓読(読下し文)とその現代訳、ならびに解説を読みやすく、わかりやすい形に加工してお届けします。
まずは、訓読、すなわち読下し文です。
子(し)曰(い)わく、
三軍(さんぐん)も帥(すい)を奪(うば)う可(べ)き也(なり)。
匹夫(ひっぷ)も志(こころざし)を奪(うば)う可(べ)からざる也(なり)。
次に、その現代訳です。
孔子が言った。
「大軍に対しても、その総大将をうばうことができる。」
「しかし、身分のいやしい男でもその志が固ければ、他人がそれをかえさせることはできない」と。
続いて、吉川博士の解説です。
・これは人間の主体性についての議論である。
・三軍とは、述而第七の「子三軍を行わば、則ち誰と与(とも)にせん」のところで説いたように、大きな侯国の軍備としてある三個師団三万七千五百人である。
それはこの地上における最も強力なものの一つのように見える。しかし烏合の衆であることもあり、また烏合の衆でなくとも、単一の主体でない。だからその中心になっている「帥(すい)」、すなわち総大将を、どっかへ連れていってしまうことも、できる。
それに対し、一人の人間の中心になるもの、それは「志」であるが、人間が、一旦こうときめた志、それをかえさせ、かすめとることは、できない。
・「匹夫」とは、一人の人間の意であるが、一夫一妻が匹(つれあい)になり、貴族のように多妻でない、低い階級の人間というのが、原義とされる。
・仁斎の「古義」に、「此れは人の、志無かるべからざるを、言うなり」。
おー、
この条の解説はここ(これ)で終わっている。
何だかこの解説は尻切れトンボ?
いや、逆にこの終わり方(終結手法)が、人には志が必要、志を持て!と大志を抱くことの大切さを強調することになる(のかな?)。
では、タイトルのことばと冒頭の記事はどうつながるのか?
と聞かれると私は困る~(笑)。
今週末、土曜日まで暫時お待ちを!
ということで、お許しを得て、「角川新字源」をあれこれ検索すると、
【三軍】さんぐん ①周の制度で、天子の六軍に対する、諸侯の大国の上軍・中軍・下軍の総称。一軍は一万二千五百人。②軍隊の通称。③大軍。全軍。
【三軍可奪帥】さんぐんもすいをうばうべし 大軍に対しても総大将をうばうことができる。匹夫(ひっぷ)に対しても志をうばいえないのに対比する。〔論・子罕〕「三軍可奪帥也、匹夫不可奪志也」
また、
【匹夫】を検索すると、次のような記載(出典)に遭遇した。
【匹夫不可奪志】ひっぷもこころざしをうばうべからず 身分のいやしい男でもその志が固ければ、他人がそれをかえさせることはできない。〔論・子罕〕
ちなみに、
【奪志】だっし 人の志を変えさせる、という記載は確認できたが、
「奪帥」という熟語には遭遇できなかった。
では、あなたにおうかがいします。
あなたは、この地上における最も強力なものの一つに立ち向かうとき、どんな戦略・戦術で臨みますか?
えっ、
そんな愚は冒さない!
ですか~(笑)



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