「適莫(てきばく)」解説ページ
社長、先に提出した原稿はいかがでしたか?
まあ~、可もなし不可もなしやなぁ~。
おまえらしいといやぁー、おまえらしい~し、
おまえらしくないといやぁー、おまえらしゅうないわな。
あれ、ほんとにおまえが書いたん?
はい、私ですが…。
なという会話はあっても、
「まあ~、適てきもなく、莫ばくもなしやなぁ~。」とか、
「適よきもなく、莫あしきもなしやなぁ~。」
という言葉を私は耳にした記憶がない。
そんなタイトルの言葉に興味を覚えて、『論語上』 吉川幸次郎(著) 中国古典選3 朝日文庫の「里仁第四」を覗いてみた。
で、ものはついでと同書からの引用を主に、訓読(読下し文)とその現代訳、ならびに解説を読みやすく、わかりやすい形に加工してお届けします。
まずは、訓読、すなわち読下し文です。
子し曰いわく、
君子くんしの天下てんかに於おけるや、
適よきも無なく、莫あしきも無なし。
義ぎにのみ之これ与ともに比したしむ。
次に、その現代訳です。
孔子が言った。
君子(紳士)といわれる人は、世界のすべてのものに対して、
厚薄(手厚いと冷淡。よいと悪い)偏頗へんぱ かたよっていて不公平)などということはない。
ただ、義(正しいもの、人道)にのみ親しむ、と。
続いて、吉川博士の解説です。
・適莫の二字、いろいろと説がある。
-適よきも無なく、莫あしきも無し、というのは、後藤点など新注系の訓である。
-古注系の清原家の点が、適あつうすることも無く、莫うすうすることも無し、と読んでいるのは、皇侃の「論語義疏」に引いた晋しんの范甯はんねいの説に、「猶お厚薄のごとし」とあるのにもとづく。
-徂徠は、「華厳経音義」その他を資料として、適は親しむ、莫は疎うとんずるであると説いている。・要するに紳士は世界の万物に対して、主観的な好悪をもたない。ひとえに義ただしきものにこそ、比したしむということである。、
・比の字が、親しむという意味であるのは、陸徳明の「経典釈文」によった。
おー、なるほど!
「可もなく、不可もなし」という使われ方はあっても、
「適てきもなく、莫ばくもなし」とか、
「適よきもなく、莫あしきもなし」
という言葉を聞かないわけが、私はわかったような気がした。
ちなみに、お加減(体調)はいかがですか? とか、
景気(業績)はいかがですか?などと問えば、
「よくも無く、悪くもなしやなー」
「まあー、ぼちぼちや」
という答えは返ってくる。
では、と、タイトルの言葉を「角川新字源」で検索すると次のように記載されていた。
【適莫】てきばく/せきばく 鄭玄じょうげんの説は、適は敵、莫は慕、「てきぼ」と読み、にくむこととこのむこと、好悪こうお。
范寧はんねいの説では、適は厚い、莫はうすいの意で、人に対して親切であったり不親切であったり不公平なこと、偏頗へんぱ厚薄。
朱子の説では、適は専主(ただ特定の人とだけ交際する)、不肯(交際を承知しない)、また一説に、適は可、莫は不可の意。
范寧の説がよいとされている。
〔論・里仁〕「君子之於天下也、無適也、無莫也、義之与比」
おぉ~、
吉川博士の解釈、解説とほぼ一致!
んっ、「范甯はんねい」と「范寧はんねい」?
違う!
と「角川新字源」を見ると、
「寧」と「甯」は同じであることが確認できた。
めでたし、めでたし(笑)。
んんっ、
さらに、疑義が!
と書き連ねていけば適切さを失い、疎うとんじられそう~(笑)
ということで、この続きは後日!
では、あなたにおうかがいします。
あなたは何(誰)に対して手厚く、何に対して冷淡(薄い)ですか?



「正法眼蔵」の講義書、岸澤惟安著「正法眼蔵全講」を読んでいましたら、「論語に、無適也、無莫也。ということがある。」というくだりにでくわしました。何のことやら、意味不明。ちんぷんかんぷんで、インターネットに解説してあるサイトはないか、と探していましたところ、ここにたどりつきました。
おかげさまで、大要がつかめました。ありがとうございました。
投稿: | 2009年7月 8日 (水) 16時23分