「巧言令色足恭」解説ページ
さて、「巧言こうげん令色れいしょく鮮すくなし仁じん」
といえば、ご存知!
論語の学而篇がくじへん第三章に見える孔子の言葉ですね。
そしてその現代訳は、口先上手で、表面づらがいいのは中身が無い。つまり真の愛情が少ない!
という意味でしたね、
では、それに「足恭すうきょう」を付け加えるとどうなるか!?
早速、『論語上』 吉川幸次郎(著) 中国古典選3 朝日文庫の「公冶長こうやちょう第五」からの引用を主にお届けします。
まずは、訓読、すなわち読下し文です。
子し曰いわく、
巧言こうげん、令色れいしょく、足恭すうきょう、
左丘明さきゅうめい、之これを恥はず。
丘きゅうも亦また之これを恥はず。
怨うらみを匿かくして其その人ひとを友ともとす、
左丘明さきゅうめい、之これを恥はず。
丘きゅうも亦また之これを恥はず。
次に、その現代訳(直訳)です。
孔子が言った(先生の言葉である)。
「口先上手で、表面づらがよく、度を過ぎた恭うやうやしさを
左丘明さきゅうめいは恥とした。」
「私(丘)もまた左丘明同様、これを恥とする。」
「憎み嫌っているのに、それを隠してその人と友達づきあいすることを
左丘明さきゅうめいは恥とした。」
「私(丘)もまた左丘明同様、これを恥とする」。
続いて、吉川博士の解説の一部です。
・まず人名についていえば、左丘明さきゅうめいとは、
「春秋左氏伝しゅんじゅうさしでん」の著者であり、盲人の学者であったとする説と、それとこれとは別人だとする説とがある。要するにどういう人かよく分からない。
・また「丘」は孔子の実名、一人称として用いられている。
・一条の意味は、巧言すなわちお世辞、令色すなわちうわべの愛嬌、それと足恭、これについては二説あり
-足の字をスウと発音し、足り過ぎた丁寧さというのが一説、
-普通の音のソクに発音して、足どりを恭うやうやしくするというのがまた一説であるが、
要するに三者ひっくるめて、内容のともなわない空虚な態度、それを左丘明は、卑屈なことだとしたが、私も同様にそれらを卑屈な行為だと思う。また、その人を嫌悪しながら、しかも嫌悪を匿かくして友だちづきあいをする、というのを、左丘明は卑屈なことだとしたが、私もまた同様に、それを卑屈な行為だと思う。
・この条の文章のたくみさは、「左丘明之れを恥ず、丘も亦た之れを恥ず」というところにある。
はじめにいったように、左丘明というのはどういう人物かよくわからない。
したがって、その孔子に対する関係もよくわからないのであるが、孔子の後輩、もしくは弟子で、左丘明はあったとして読むとき、もっともおもむきが深くなる。
・二つの不道徳に対する反省、というよりも反撥、「之れを恥ず」の恥の字は、反撥をこそ意味するであろうが、反撥は、まず左丘明におけるものとして提起され、孔子みずからの反撥が、それにかぶさることによって、最も強い反撥となる。
・二つの不道徳のうち、私がことに重要と思うのは、後半の「怨みを匿して其の人を友とする」ことであって、いやな人物だと思いながら、いろんな関係でやむなくつきあうということが、われわれの場合にも多いが、それは恥ずべき不道徳なのである。
う~ん、
いつ見ても、この本(『論語上』 吉川幸次郎(著) 中国古典選3 朝日文庫)に記載されている吉川博士の解説はすばらしい!
そのわけは、聞き語りを元に構成されたものであるゆえに、読む人に語りかけているように、私には感じられる。
特に、この章の解説中において、「孔子の後輩、もしくは弟子で、左丘明はあったとして読むとき、もっともおもむきが深くなる。」
というくだりは、なるほど!
と私は得心がいくのであるが、
あなたの体験からのお考えやいかに…?
それでもなお、疑り深い? 私は
「角川新字源にてタイトルの語句を検索してみる(笑)。
・【巧言令色】こうげんれいしょく 口先じょうずで、顔色を和らげて人にこびへつらう。〔論・学而〕
【令色】れいしょく ①顔色をやわらげて、人にこびる。〔論・学而〕「巧言令色、鮮矣仁」 ②やさしく美しい顔。
・【足恭】すうきょう 度をすぎたうやうやしさ。〔論・公冶長〕
う~ん、
この検索結果(内容)のみでは、少し、さびしい!(笑)
そこで、「広辞苑」にて、これらの熟語を検索してみた。
・こうげん【巧言】言葉を飾って巧みに言うこと。くちさきのうまいこと。また、その言葉。
・こうげんれいしょく【巧言令色】[論語学而「巧言令色鮮矣仁」] 口先がうまく、顔色をやわらげて人を喜ばせ、こびへつらうこと。仁の心に欠けることとされる。
・れいしょく【令色】 ①[論語学而]他人の気に入るように顔色をよくし飾ること。 ②容儀を正した顔つき。
・すうきょう【足恭】 [論語公冶長「巧言令色足恭、左丘明恥之、丘亦恥之」](スウは慣用音。「足」は過ぎる意)うやうやしさの度が過ぎること。おもねりへつらうこと。すきょう。
んんっ?
「すきょう」!?
ということでさらに検索すると、
・すきょう【足恭】⇒すうきょう
とあり、なるほど納得!
正しい音読みが「すきょう」で、「すうきょう」は慣用音かー…。
そこまでは、さすがに吉川博士の解説にも、
また「角川新字源」にも見当たらなかっった!
なんで?(笑)
さらにいえば、同じ辞書であっても、
「広辞苑」と「角川新字源」では、その意味が多少異なる!?
と思われる箇所が散見される。
なんで?(笑)
などと深堀をすればするほど、
あぁ~、どうにも止まらない♪
今夜もまた眠れそうにない!(笑)
かように、私の好奇心は、肩の凝りも目の疲れも、はたまた食事までも忘れ、さらには老いの将まさに至らんとするのまでも知らず、
楽しんで以って、憂いを忘れさせてくれるのであった~♪(笑)
では、あなたにお伺いします。
あなたが恥とする、つまり嫌悪(反撥)する人は、どんなタイプの人ですか?
えっ、
私のようなタイプ!?(笑)
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