「禮之本(れいのもと)」解説ページ
「今日は立派な結婚式やったなぁ~」と、
披露宴の後で感慨深げに語るOさん。
さて、このOさんの「立派な結婚式」という
言葉の裏には、一体、どんな意味や状態・状況・情報が
隠されているのでしょう!?
たとえば、披露宴の出席者数や出席者の知名度、
また、料理の種類の多さや美味しさ、
あるいは、花嫁の衣装の豪華・絢爛さや、お色直しの頻度、
はたまた、来賓者や友人・知人の祝辞と余興の数や
式場側の演出の巧みさ…?
果たして、Oさんはこれらの内の何を見、
どんな基準にしたがって、「立派な結婚式」という
評価を下したのであろう…。
もし、孔子なら何と…?
ということで、先ずは、『論語上』 吉川幸次郎(著) 中国古典選3
朝日文庫からの引用を主に始まる、以下の「八佾はちいつ第三」
第4章 を篤とくとご覧あれ~♪
最初に、訓読(読下し文)を。
林放りんぽう、礼れいの本もとを問とう。
子し曰いわく、大おおいなるかな問といや。
礼れいは其その奢おごらん与よりは寧むしろ倹けんせよ。
喪そうは其その易おさめん与よりは寧むしろ戚いため。
次に、現代訳を。
林放りんぽうが、礼の根本について孔子に尋ねた。
孔子の答え。「立派な(すぐれた)質問だ。
礼は贅沢すぎるよりも、質素を旨とし、
喪は細々した形式よりも、その人の死を痛み悲しめ」と。
続いて吉川博士の解説を。
・林放りんぽうは、古い注にも魯の人というだけで、
どういう人物かよく分からない。
それが孔子に対し、礼の根本は何にあるかたずねたのに対する、答えである。孔子はいった、大きな質問だ。われわれならば、
むつかしい質問だ、ということであろう。礼は無理なぜいたくをするくらいであれば、
むしろ倹つつましやかであれ。また礼の中で最も重要なものの一つは、喪そう
すなわち近親の死をいたむ礼であるが、それは
こまごまと気をくばるよりは、哀傷を第一とせよ。・喪与其易也寧戚、の易の字を、古注は和易、
おだやかさと解するが、いまは新注が、易は治也、
整頓とするのによる。与其……寧……は、……其その与よりは、
寧むしろ……と訓ずる、二者択一のイディオムである。
う~ん、
冒頭の問いに対する答えは、
ここ(吉川博士の解説)にはなさそう…。
では、新注によるという『論語新釈』 宇野哲人 講談社学術文庫
にはどのような記述が、と思い、同書を見れば以下のように。
[通釈]<前略>礼には色々あるがいずれもあまり文かざりが過ぎて贅沢ぜいたくなのよりは、どちらかといえば、質きじが勝まさって倹約のほうがよい。
喪も――凶礼きょうれいは文かざりが過ぎて哀かなしみの足りないのよりは、どちらかといえば、質が勝って哀かなしみの過ぎたほうがよい。[解説]<前略>吉礼きちれいにつけても凶礼きょうれいにつけても、なるべく盛大にして、人に見せて己おのれの勢力なり財力なりを誇ほころうとする人が往々あるが、礼の本を忘れる人は古いにしえから多かったと見える。
おぉ~、
あった!!!
冒頭のOさんの
「立派な結婚式」の答えが、ここに。
すなわち、「立派な」という形容詞に込められた意味は、
豪華さや華やかさ、つまり、「なるべく盛大にして、
人に見せて己の勢力なり財力なりを誇ろうとする人」
の心理に応えた言葉であり、
「禮之本れいのもと」を忘れた人の言葉!?
ということは…、
Oさんも世俗の人?
それとも、Oさんは
感情が豊かで、正直な人!
なのかも…。
ちなみに、タイトルの熟語は!?
と、『角川新字源』にて検索するも…。
残念!
遭遇できず。
そこで、タイトルの「禮れい」ほか、この漢文の語句を
『角川新字源』にて検索して遭遇した結果は以下のとおり。
【礼】【禮】レイ/ライ [なりたち]形声。
旧字は、示と、音符豊レイ(ふみおこなう意→履リ)とから成り、神をまつる際にふみ行うべき儀礼、ひいて、人の守るべき秩序の意を表わす。【大】タイ/ダイ [なりたち]もと、人が両手両足をひろげて立っている形にかたどり、「おおきい」意を表わす。
意味:[一]のシ すぐれる。りっぱ。〔論・八佾〕「大哉問」【易】[一]エキ [二]イ やさしい 意味③ おさめる(おさむ)(治)。ととのえる。おさまる。
〔論・八佾〕「喪与其易也寧戚」
また、吉川博士がおっしゃる
「二者択一のイディオム」とは?
と、手元の英和辞典を検索した結果は次の通り。
イディオム(idiom。慣用語法 [語句]、熟語、成句)
では、あなたにお伺いします。
あなたはどんな葬儀をお望みです?
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