禮之本(れいのもと)
「借りたら、返せ。
やられたら、やり返せ。
それが礼儀っちゅうもんや!」
と、私のかつての上司、
Tさんはおっしゃる。
では、「礼儀」とは?
と『角川新字源』を見れば、次のように。
【礼儀】れいぎ 人が行動において守るべき作法。
礼はそのうちの大きいもの、 儀は細かいもの。
う~ん、
ということは…。
ギブアンドテイク(give and take)!?
すなわち、「対等な交換」や「やりとり」も、
この世においては、人が守るべき作法の
1つではあるが…。
さらに、上司のTさんは、
以下のように続ける。
「おまえ、借りたら返すのが
当たり前やろっ!?
この世の中で、借りっ放しや取りっ放し、
また、持って行きっ放しでは、
人生の帳尻が合わんのと違うか!?
また、やられたら、やり返すのも
一緒やっ!
いつもやられっ放しでは、
相手は増長する一方で、何の得にもならんぞ。
そればかりか、終いには、
相手にバカにされるのが落ちよっ!
だから、やられたらな、
『この人には、敵わん!』
と相手が思い知るようなキツ~イ一発を、
『ガッツン!』と食らわしちゃらんか!
それが、礼の本であり、
バイヤーの礼儀っちゅうもんと違うか!?
そうやないか?」
と問いかけた後で、次のような一言を付け加えて、
結ぶのがTさんの1つの癖であった…。
「おまえ、よう考えてみ~や」。
それから30数年後の、いま、ここで、
現実を振り返ってみれば、次のことに気づく。
わが人生においては、
借りっ放しの方が多い!
その始まりは、今を去ること半世紀前。
すなわち、50年も昔の話。
田舎出の純真無垢な若者であった?(と思う)
当時の私(筆者)は、とある日、
何かと面倒を見てくれる先輩に対して、
次のように言った記憶が…。
「いつも、こんなに奢ってもらっても、
私はよう返しませんけど…」と言い、
いま、ここの私には、礼の本、つまり、
借りたら返す能力のないことを
申し訳なさそうに口にした。
すると、くだんの先輩は、
以下のようにおっしゃる。
「ええんよ。
そんなこと。気にせんでも!
君が僕の年頃になったら、
君のような若者、後輩に奢ってやったら、
それでええんよ。
僕も若い頃には、そうやって、いつも
先輩に奢ってもらうた。
それが、人生というもんよ。
だから、気にせんでもええんよ。
分かった!?
よっしゃあ~、分かったら、
もう一軒、行こかっ!?」と。
ちなみに、孔子は礼の本(禮之本)とは、以下のように述べて、
文かざりよりも質きじ、すなわち内面の問題だと説くのであるが…。
「礼は奢おごらん与よりは寧むしろ倹けんせよ。
喪そうは易おさめん与よりは寧むしろ戚いため」と。
では、あなたにお伺いします。
あなたの人生は、
貸借のバランスが釣り合っています?
また、文ぶんと質しつの調和、すなわち、文質彬彬ぶんしつひんぴん、
つまり、外見の美と内面の実質とは、釣り合っていますか。
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