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2016年1月 9日 (土)

「恭己(きょうき)」解説ページ

1510104 画像は池田修三展からの1枚で、
秋田の友人からのプレゼントです。

 さて、今を去ること30数年前の話。

とある企業(S社)の、資材担当責任者Yさんから、
私は以下のような言葉(苦情?)を
聞く機会に恵まれた。

「今、電話し終わった思うたら
もぉー、席においでん。
忙しいお人でんなぁー。」

 また、同社の営業責任者Fさんからは
以下のような類の言葉(忠告?)も。

「うちのY(前出の資材担当責任者)が言いよったけど、
ホント、あんたは席の温まらん人やなぁー。

さっき、電話で話よったと思うたら、
もう、現場でっかぁ…。

あんたのような偉いさんは、
南向きの椅子にドォーンと坐って、
判子だけ押よったらよろしいんと
違いまっか? 

1日も早く、そうしなはれやっ」と。

 では、これらの言葉に対して
当時の私がどのように答えたかといえば!
という話は後段のお楽しみ。

 先ずは、『論語』 吉川幸次郎(著) 中国古典選4 
朝日文庫からの引用を主に始まる、以下の
「衛霊公えいれいこう第十五」 第5章を篤とくとご覧あれ~♪

 最初に、訓読(読下し文)を。

わく、
無為むいにして治おさむる者ものは、
れ舜しゅんなる与
れ何なにをか為す哉
おのれを恭うやうやしくして
ただしく南面なんめんするのみ。

次に、現代訳を。

孔子が言った(先生のお言葉である)。
「何事もしないで自然に天下を治めた人は、
舜であろうか。
舜は何をしたか。
自分の身の行いをつつしみ、
正しく南に向いて坐っていただけである」と。

 続いて吉川博士の解説を。

・古代の帝王舜に対する賛美である。

いわく、なにも人為的なことをせずに、
うまく政治をしたのは舜であろうか。

ことごとしい人為的なこととして、
舜は何をしたか。

ただ自己を敬虔にして、
天子たるにふさわしく、きちんと南を
向いてすわっていただけである。

南を向いてすわるのは、
天子のすわりかたである。

・さきの子路第十三の、「其の身正しくば、
令せずして行われ、其の身正からざれば、
令すと雖も従わず」(詳しくはこちら 「其身正」
解説ページ)
などと同じ思想にもとづく条と
思われるが、

梁の皇侃の「義疏」に、舜は先任者である
堯も聖人であれば、後継者である禹も
聖人だという、得がたい環境にめぐまれて
いた。

だから「無為にして治まった」、というのは、
六朝人らしい面白い説である。

 さて、冒頭の話の続き。

では、「無為にして治める」ことができなかったのは
私が聖人ではなかったから…?

あるいは、私の先任者も後継者も、
聖人ではなかったので、私は
「無為にして治める」ことができなかった!?

否、私の先任者も後継者も、ともに普通の人で、
(したがって)事務所と現場を掛け持ちしていた。
いわゆる、プレイングマネージャであった。

だから、プレイングマネージャの私も、
席の温まる間もなく、現場と事務者を
走り回っていた。

 ところが、冒頭の企業、S社においては、
当時の私の立場(役職)の人々は、
現場で現物を確認することもなく、
承認印のみを押している(とおっしゃる)。

 その違いは何かといえば…、
概略以下のようになる(と私は考える)。

・組織の成熟度
・風土・慣習
・自らの力量・度量・人間性
・部下の成熟度
・上下・左右との信頼関係(=コミュニケーションの質と量)

 では、私は冒頭のお二人、すなわち、YさんとFさんに
このような講釈を垂れて相手の気を引いていた?

否、当時の私は、己の言動をつつしむことに
無頓着ゆえに、次のように答えていた。

「お宅が今の納入価格の半分にしてくれたら、
私も南向きの机の前に座って、
毎日、判子だけおしよるんやけどなぁー。

どぉー、全製品を
今の価格の半分にしてくれる!?」と。

これに対する返事は、
いつも決まって(判を押したような答えで)、
「そんなアホな!」であったが…。

漏れ聞くところによれば、
S社ではそのような体制故にか?

それから数年後に、数億円にも上る不正が
明らかになったとか…。

その要因の1つは、承認印を押す立場の人々が
「恭己」、すなわち、自らのおこないと身をつつしむ
ことを失念して、奢り高ぶっていた…?

あるいは、三現主義、すなわち現場で現物を見て、
現実を認識・確認することを怠っていた…。

それとも、売上至上主義で、
あまりにも部下を無条件に、
信用し過ぎていた…?

 ちなみに、『角川新字源』にて
タイトル他の熟語を検索した結果は以下の通り。

【恭己】きょうき/おのれをうやうやしくする 
①自分の身の行いをつつしむ。
〔論・衛霊公〕「恭己正南面而已矣」

②実権が強臣に移り、天子がただ君位にあるだけでなにもしないこと。
〔通鑑〕「時政在曹氏、天子恭己」

【無為】むい ①何事もしない。少しも干渉しない。②自然のままで人工を加えない。
③〘仏〙生滅・変化しないもの。
対義語:有為うい

【無為而治】むいにしておさまる=【無為而化】むいにしてかす 聖人の政治は、何事もしないで自然に天下が治まる。〔論・衛霊公〕

 さて、1つの事実を基に、古典を引用しながら、
講釈(解釈)を書き連ねた結び、すなわち本日の
気づきは!

たとえ、周りの人々からは
「椅子みがき」と揶揄されても、

「恭己きょうき」、すなわち己おのれを恭うやうやしくして坐って
いるだけで、物事が治まり、組織を維持(=発展)できる
ならば、それに越したことは無いのであるが…。

如何せん!
凡人の身では、それも適わず…。

 では、あなたにお伺いします。

あなたの上司は、「恭己きょうき」、
すなわち、自らの身と言動をつつしみ、
きちんと南を向いて坐っていますか、それとも…?

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