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2017年6月18日 (日)

不辱君命(くんめいをはずかしめず)

17031809 画像は秋田の友人からの
プレゼントです。

 さて、かれこれ四半世紀、
すなわち、25年ほども昔の話。

月曜日の朝一番に、
受話器を取った社員が
私に、次のような一言を。

「社長からお電話です」。

 「んっ、
月曜の朝一に社長から?

「何事?」と思いながら、
受話器を取ったところ、

オーナー社長のTさんが電話越しに
以下のようなことをおっしゃる。

「ちょっと、すまんけど、
今から広島に行ってくれんか?

今日、広島で○○工業会の会議があってな、
わしが行く予定をしておったんやけど、
どうも調子が悪うてのぉー。

どうしても、行けそうにないんや。

それで、すまんが、わしの代わりに
今から広島に行ってくれや。

そして広島に行った
会議の席ではやな、

『P社が、無茶苦茶をしよる。
過当競争もええとこやっ!

県内の市場を荒し回っとる!
安い見積もりを出して困っとる。』

と、厳しく言うてくれや。

 会議の詳しい資料は
わしの机の上に置いてあるから
T(社員)に言うてくれたらわかるけんの。

T(社員)にも、その旨、わしの方から言うとくから、
すまんが、T(社員)に代わってくれんか」と。

 月曜日の朝、社長からの突然の指示・命令に、
取るものも取りあえず、自宅へ取って返した私は、

果たして無事、使者としての役目を
果たすことが出来たのか、否か!?

という話は、
後段のお楽しみ。

 先ずは、『論語』 吉川幸次郎(著) 中国古典選4 
朝日文庫からの引用を主に始まる、以下の一章、
子路しろ第十三 第20章の冒頭部分のみをご覧あれ~。

 最初に、訓読(読下し文)を。

子貢しこううて曰わく、
如何いかんぞ斯れ之れを士と謂うべき。
わく、
おのれを行おこのうに恥じ有り。
四方しほうに使つかいして、君命くんめいを辱ずかしめず、
と謂うべし。

 次に、現代訳を。

弟子の子貢が尋ねた。
「どのような人を士というべきでしょうか」?
孔子が言った(先生は次のようにおっしゃいました)。
「自分の言動に責任がり、恥を知っていること。
他所の国へ使いに行き、君主の名をはずかしめない、
それが、士(学問・修養を積んだ人)というんだよ」と。

 続いて、吉川博士の解説を。

・子貢がたずねた。
どういう条件をもてば、「士」ということが
できますか。

この条における「士」の字の意味は、
あとの問答から見て、すぐれた官吏の意で
あるように思われる。

孔子は答えた。
自己の行動に対して、その行動が、
羞恥を生むものであるかないかを吟味し、
羞恥を生む行動は、しない。

つまり有恥とは無恥の反対である。

また四方のくにぐにに、使者として派遣され
れば、出発の際に君主から受けた命令を、
充分に伝達して、それをはずかしめることがない。

そうであってこそ、「士」と評価してよろしい。

・己を行うに恥じ有り、とは、
単に「士」の条件であるばかりでなく、
一般の人間の条件としても、重要である。

「行己有恥」の四字を、
雍也第六の「博学於文」(詳しくはこちら
「博文約礼」解説ページ)と対句にし、

門の扉の両側に対句としてしるしてある
のを、しばしば中国では見かける。

 んんっ、
「行己有恥」と「博学於文」の対句?

と、興味を覚えた私は、果たして、この4字熟語が、
角川新字源』には存在するのか、否か?

と疑念を抱きながら、
検索してみた結果は以下の通り。

・【行己】おのれをおこなう 自分の身を行動させる。自分の行いをする。〔論・公冶長〕
「有君子之道四焉、其行己也恭」

・【有恥且格】はずるありてかついたる はじを知り、身を修めて善に至る。
格はいたる。また格は「ただし」とも読む。〔論・為政〕

・【博学】はくがく 広く学ぶ。広い学識がある。

・【於】オ/ヨ 意味二.①助字。
 -。 場所、時間、対象を示す。
 -。 動作の目的を示す。
 〔論・雍也〕「君子博学於文

 んっ、
この漢文は、返り点や用法からすれば、

「君子は博ひろく文ぶん学び」かな?

と、私は思いながら、吉川博士の解説を
見たところ、「文学び」と記されている。

ならば、吉川博士の解説を見る限りにおいては、
文は、「動作の目的」ではなくて、学ぶ「対象」?

それとも、この辞書(『角川新字源』)の方が
間違っている…?

と、細かいことが、妙に気になる私は、
他の2、3の参考書(市販本)を見てみた。

その結果は、
角川新字源』の方に、軍配!

すなわち、いずれの参考書(市販本)も、
「文学び」と記されている。

やれやれ、またまた脱線して
その努力も徒労に終わったものの…、

「行己有恥」と「博学於文」の対句にも、
また四字熟語にも、遭遇できず。
残念!!

 次に、タイトルの「不辱君命くんめいをはずかしめず」とは、

「君主から受けた命令を、充分に伝達して、
それをはずかしめることがない」と、

吉川博士は訳しておられる。

では、『角川新字源』にはどのように?
と検索してみた結果は次の通り。

【不君命くんめいをはずかしめず 主君の
命令で使者となり、外国に出かけたら、
任務を完全に果たすこと。
〔論・子路〕「使於四方、不君命

 さらに、「士」とは、
「すぐれた官吏の意」だと
吉川博士はおっしゃる。

そこで、またまた『角川新字源』にはどのように?
と見たところ…。

・士 部 〔解説〕象形。官に仕える男子の意に用いる。

・【士君子】しくんし 学問もあり、人格もある人。

・【士人】しじん ①学問・修養をつんだ人。官吏や学者の家柄の人。

 う~ん、
「士」とは、「士君子」、あるいは「士人」だと
浅学菲才の身には思えてならないが…。

 さて、冒頭の続き。

 先ず、結論から言えば、
私は使者としての役目を
果たすことが出来た!

と述懐している。

その証拠として、
これが最初で最後にならなかった。

すなわち、これ以降、私はオーナー社長の代わりに、
「わしがわしが」の我が強いオーナー社長の集まり、

つまり、無駄な過当競争を繰り返す業界の会合に
度々、出席して、その末席を汚すことに…。

そのようなことを振り返ってみれば、この時の私は、
無事、役目を果たしてオーナー社長の信頼を得た。

だとすれば、この頃の私は
「士」!?

なんとなれば、この時期の私は
「不辱君命くんめいをはずかしめず」!

そんな気概と思いが、
私の心のどこかにあったのだから…。

 では、あなたにお伺いします。

いま、ここのあなたは、「士」?

すなわち、上司の命令を受けて訪問した相手先にて、
あなたは上司の名を辱めない自信がありますか。

平たく言えば、訪問先のどなたかからも、
「あんな奴は2度と遣すな!」というお叱りの声や
苦情が、上司のもとに届いていませんよねっ!?

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