リンク集

« 可使由(よらしむべし)、不可使知(しらしむべからず) | トップページ | 不試(もちいられず) »

2018年11月 4日 (日)

「不試(もちいられず)」解説ページ

Dsc03272 画像は秋田の友人からの
プレゼントです。

 さて、3年程も前のある日のこと、
私はゴルフが上手なKさんに、
次のように尋ねる。

「T社(某大手メーカで、Kさんがかつて勤めていた企業)の
人(出身者)は、どうしてゴルフが上手なんです?」と。

すると、Kさん次のような
一言を以って、応えた。

「暇なけんよ。
何もする仕事がないけん、
ゴルフが上手くなるんよ」と。

 おぉ~、
そういえば!

ゴルフが上手な人に対して、
同伴者の1人が、次のような一言を
発しているのを私は耳にした記憶が。

「おまえ,仕事しよるんか!?」
と、やっかみ半分で冷やかす声を。

 また、よく見聞きする言葉として、
次のような俗諺も。

「経営者がゴルフにのめり込んでいる
企業は危ない!」と。

 ところが!

という話の続きは
後段のお楽しみ。

 先ずは、『論語』 吉川幸次郎(著) 中国古典選3 
朝日文庫からの引用を主に始まる以下の一章、
子罕しかん第九 第7章を篤とくと、ご覧あれ~。

 最初に、訓読(読下し文)を。

ろうわく、
う、
れ試もちいられず、
ゆえに芸げいなり。

 次に、現代訳を。

弟子の子牢しろうが言った。
「先生(孔子)はいつの日か、次のようなことを。

『私は世の中に用いられなかった。
だから、多能なのだよ。』と、おっしゃいました」。

 続いて、吉川博士の解説を。

・牢とは人名であり、
鄭玄、それは古注にも引くものであるが、
それにはただ、「弟子子牢」とだけいう。

朱子の新注には、「牢は孔子の弟子、
姓は琴きん、字は子開しかい
またの字は子張」。

顓孫子せんそんし、字は子張とは、
むろん別人である。

・さてこの子牢が、いつか先生のいった
言葉として、人にかたった。

「吾われ試もちいられず」、
私は自分の才能を、充分に試し得べき
地位を与えられなかった。

つまり世の中の役に立つ重い地位に
つくことができなかった。

「故に芸なり」、だから、かくもいろいろの
技術を、知っている。

・この条、新注は、まえの条(詳しくはこちら 
「多能鄙事」解説ページ)とあわせて一条とする
が、いま古注系統の本により、別条とする。

 んっ、
「不試もちいられず」とは、

「試し得べき地位を与えられなかった。」
ということ?

じゃあ、
角川新字源』にはどのように?
と同書を開いてみるも…。

遭遇できたのは、次の語句のみ。

】  /こころみる ためす 

なりたち]会意形声。
言と、法度はっとに合わせる意と音とを示す
ショク→シとから成り、官に用いる、
しらべる、ひいてためす意を表わす。

意味]①もちいる。官職につける。
〔書・堯典〕「明試功」

②しらべる。よしあしを比較する。「考試」
こころみる。ためす。やってみる。
こころみ。
⑤こころみに。「嘗試しょうし

 う~ん、
この辞書を見て、
私は次のように考えた。

「試ためす」ためには、
「試用」してみる。

すなわち「ためしに使ってみる」
必要がある。

したがって、「不試もちいられず」とは、
「試し得べき地位を与えられなかった。」

という意味にてOK。
ノープロブレム!

と、ひとり合点を。

 次に、「芸なり」とは、

「いろいろの技術を、知っている。」
と、吉川博士はおっしゃる。

そこで、再び、『角川新字源』にはどのように?
と見てみた結果は…。

ゲイ 意味わざ。はたらき。
才能。学問。「才芸」

 う~ん、
この辞書を見る限りにおいては、

「芸」には、「才能」「才芸(=能力)」という意味は
あっても、「いろいろの技術」という意味が
見当たらない。

で、困った時の
論語新釈』(宇野哲人 講談社学術文庫)頼み。

早速、同書を開いて見た結果は
以下の通り。

[語釈] 〇試もちひる=用いる。

〇藝げいあり=多能の意。

 おぉ~、
「芸なり」とは、
「多能」の意味。

ならば、合点(納得)!
といきたいところなれど…。

厳密にいえば、「技能」とは、
「技術的能力」のこと。

したがって、「いろいろの技術」と
おっしゃる吉川博士の解説には

多少の違和感はあるものの、
「〇」、すなわち、OK!

と、私(筆者)の腑に落ちたところで、
冒頭の続きを。

 さて、それは四半世紀、
すなわち25年程も昔の話。

ある企業のゴルフコンペにて、
懇親会を兼ねた成績発表の場でのこと。

とある企業のオーナー社長、Gさんが、
我が子ほども年の離れた二代目の経営者に
次のようなことを。

「Aさん、なんぼ、経営者は
『鄙事ひじに多能であってはならん!』いうても、

Aさんの場合は、あまりにも叩き過ぎよ。

『ゴルフにのめり込んで、会社のことは放ったらかし』
いうのも考えもんやけど、

毎回、BB賞やホタル賞を取りよるようでは、
周りの人々に、馬鹿にされるだけではなく、
同伴者にも迷惑をかけるぞよ。

『高たかがゴルフ』いうても、
『然れどゴルフ』よ。

ゴルフを通して、その人の物事に取り組む真剣さや
その取り組み姿勢や態度、ひいては、人間性まで
問われるのが、ゴルフよ。

したがって、今のままのスコアでは、
Aさんの人間性にまで疑問符を付けられる
ことにもなりかねんよ。

だから、もう、ちょっと、練習をして、
上手くなるよう、努力をせにゃあな。」

と、優しく諭す(説教する?)。

が、当の本人、Aさんは一瞬、照れ笑いを浮かべ、
その場を取り繕ったものの…。

心の奥の方では、
「どこ吹く風」。

その心(胸の内に)は、経営者は
『鄙事ひじに多能であってはならぬ!』

という先代の教えを固く守り通そうとする一徹さ、
信念の強さ・堅さを、Aさんは顔で表現して
みせたのであった…。

 では、あなたにお伺いします。

あなたは、「試もちいられている!」
すなわち重用されている・必要とされている!

と、感じていらっしゃいます?

« 可使由(よらしむべし)、不可使知(しらしむべからず) | トップページ | 不試(もちいられず) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「不試(もちいられず)」解説ページ:

« 可使由(よらしむべし)、不可使知(しらしむべからず) | トップページ | 不試(もちいられず) »

2024年1月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のトラックバック

無料ブログはココログ