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2018年12月 1日 (土)

「陋(ろう)」解説ページ

Dsc03262 画像は秋田の友人からの           
プレゼントです。

 さて、かれこれ20年近くも
昔の話。

新卒採用予定者の中に一人、
気になる女性(女の娘)が。

で、私は上司のTさんから密かに命を受けて、
些細な用事をつくり、彼女の自宅を訪問した。

もちろん、事前に履歴書に記載されていた
連絡先に電話をしたうえでのことであったが…。

すると、応対に出た彼女のご母堂が、
次のようなことを。

「むさくるしい所ですが、
どうぞ、おあがりください。」
と、おっしゃる。

私は、「入社に必要な書類を届けに来た
だけですから、玄関先にて失礼します。」
と言い、帰ろうしたものの、

「それじゃあ、あまりにも失礼かな?」
という思いと、

「当の本人、すなわち採用予定者の普段の顔、
つまり履歴書の顔(=余所行きの顔)とは
異なる顔を見てから帰ろうかな。」
と、思い直して、お邪魔することに。

すると、案内された居間は
きちんと整理されていた。

で、「室内は清潔だったのか?」
と尋ねられれば、私は答えに困る。

それはさておき、一向に、当の本人が
顔を見せないので、私は「不在かな?」と思った。

で、私は帰り際に、
「〇〇さん(採用予定者の名前)は?」
と、尋ねたところ、暫くして現れた彼女は!

という話は
後段のお楽しみ。

 先ずは、『論語』 吉川幸次郎(著) 中国古典選3 
朝日文庫からの引用を主に始まる以下の一章、
子罕しかん第九 第14章を篤とくと、ご覧あれ~。

 最初に、訓読(読下し文)を。

、九夷きゅういに居らんと欲ほっす。
るひと曰わく、
いやしきこと之れを如何いかん
わく、
君子くんしれに居らば、
んの陋いやしきことか之れ有らん。.

 次に、現代訳を。

先生(孔子)が東方の未開の地に住みたいと漏らした。
この思いに対して、ある人は次のように尋ねた。
「いやしい所にいってどうするのですか?」と。

先生(孔子)は次のようにおっしゃいました。
「紳士がそこに居れば、
どうしていやしいことなどあるものか」と。

 続いて、吉川博士の解説を。

・古注に馬融ばゆうを引いて、
「九夷とは東方の夷に九種有るなり」
といい、新注の鄭注もおなじ。

皇侃の「義疏」には、その九種を列挙して、
一に玄菟げんと、二に楽浪らくろう、そして八に
倭人わじん、すなわち日本人という。

何にしても九夷とは、
東方の未開地域である。

・孔子がいっそのことそこへ行きたいいう
意向をもらしたのは、
まえの公冶長第五の、

「道行われず、桴いかだに乗りて、
海に浮かばん」と同じ思想であって
くわしくはこちら 「取材」解説ページ)、

鄭玄の注には、世の中にいや気がさして、
こういったとする。

・するとある弟子が、
それを聞いて、いった。

「陋如之何」。「陋」とは、
物理的な条件からも、

心理的な条件からも、
むさくるしいことである。

そこへいらっしゃるのはよいとして、
そのむさくるしさにどう対処されますか。

・孔子はこたえた。
君子がそこに住めば、むさくるしさは消えて
なくなる。何のむさくるしさがあるものか。

<以下割愛>

 おっ、
「九夷とは東方の九種の夷えびすのことで、
その中の8番目が日本人だ。」
と、吉川博士はおっしゃる。

じゃあ、
角川新字源』にはどのように?
と検索してみた結果は以下の通り。

・【九夷】きゅうい 東方の九種の異民族。
古代の多くの異民族の総称。
〔論・子罕〕「子欲九夷

 あれっ?
この辞書には当該「論語」の一条はあっても、

倭人わじん、すなわち日本人という文字は
見当たらない。

でも、意味は通じる(わかる)し、
「まっ、いいか!」

と、ひとり納得して
深堀せぬ選択肢を採用。

 次に、「陋ろう」とは?

と、再び、『角川新字源』にて
検索してみた結果は次の通り。

ロウ 意味②いやしい(いやし)
(賎)→付・同訓異義。

んっ、
付録の「同訓意義」の
いやしい」を見よと。

で、(付録の同訓意義を)見た結果は、
以下の通り。

いやしい(いやし)

・【ひ 「都」に対して、
元来は、いなかの意。
いなかじみている。やぼったい。

また、人をきらい、
かろんじることにも用いる。鄙笑。

・【ろう 行きづまり、せまいこと。
場所や心のせまいこと。
いやしくきたないこと。
〔蘇軾・范増論〕
「欲羽以成功名、陋矣」

・「上下」の【】と、「貴賤」の【せん
それに「尊卑」の【の意味については割愛。

 あれっ?
この辞書を見る限りにおいては、

当該「論語」の一条には、「陋ろう」よりも
「鄙」の方が、相応しいのに、

「何で陋ろうなんかいなぁ?」と、

私なりに考えてみたところ、
決め手は、「いやしくきたないこと」。

つまり、吉川博士がおっしゃる
「陋ろうとは、物理的な条件からも、
心理的な条件からも、むさくるしい」、
すなわち「いやしくきたならしい」こと。

 ちなみに『広辞苑』にて、
むさくるしい」の意味を
検索してみた結果は次の通り。

むさくるし・い〘形〙ごちゃごちゃと
きたならしい。だらしなく不潔である。
むさくろしい。
「むさくるしい所ですが、ぜひお寄り下さい」

 あれっ
「陋ろう」の意味と、

「むさくるしい」の意味とは
微妙に異なる。

すなわち、「だらしなく」と「いやしく」とでは、
その意味は、異なる筈であるが…。

ちなみに、冒頭のご母堂が謙遜して、
自宅(借家)を「むさくるしい所」と言ったのは、

「ごちゃごちゃときたならしい」所
という意味であり、

「いやしくきたならしい」所とは、
決して、思っても考えてもいなかった(であろう)。

すなわち、「物理的(場所的)」には、
「むさくるしい」所であっても、

自分たち家族は、「心のせまい」集団だと、
彼女は思ってもいないし、また言ってもいない
(と、私は思う)。

つまり、「陋ろう」と
「むさくるしい」とは、異なる!

と、私には思えてならないのであるが…。

そんな小難しことはさておき、
冒頭の続きを。

 やおら現れた彼女は、
履歴書の容姿とは異なる。

何が!?
といえば、黒髪が茶髪に!

で、それを心配したご母堂は、
「大丈夫でしょうかねぇー?」と
不安そうな顔で、私に尋ねる。

で、私は「個人の自由ですから」
と答えたのであるが…。

如何せん、
私の上司(採用の決定を下した当の本人)は、

「陋ろう」、すなわち「心の狭い」人であったのか、否か?
その「茶髪」を問題にした。

つまり、「こんな娘とは、
思わなかった(見込み違いだった)」
と臍ほぞをかむことに。

もっとも、彼女の場合は茶髪のみならず、
能力にも問題を抱えていた。

したがって、彼女は半年も経たぬ間に、
会社を去っていったのであるが…。

 では、あなたにお伺いします。

あなたが今お勤めの所は、「陋ろう」なのでしょうか
それとも「むさくるしい」所なのでしょうか?

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