其他可能也(そのたはよくすべきなり)
さて、30年近くも昔の話。
Aさんが同僚を集めて、
次のようなことをおっしゃる。
「昨日、社長が、
わしに『辞めよ』と言うんよ」と。
この言葉の裏には、
次のような思い(忠告?)が隠されていた?
「30数年間も、社長と共に苦労を重ねて、
この会社の礎を築き、ここまで大きく、育て上げた
(最大の)功労者のわしに、突然、『辞めよ』とは、
社長は血も涙もない人間か!?
その内、君等も、近い将来、同じ目に遭うからな。
気を付けよよ。
そんな目に遭わんよう、いま、ここで、わしの言うことを
よぉー聞いて、防衛(保身?)策を考えとけよ。」
という思いに併せて、以下のような思いや忠告も?
「いま、ここで、わしが辞めたら、
この企業は成り立たん(倒産する)から、
皆も、今のうちに、早よ、辞めた方がええよ」
と、Aさんは言いたかったのであろうか…?
突然で、想定外の、オーナー社長の一言に、
Aさんはショックを受けたのか?
動揺を隠しきれず、腫れた眼で、
思うがままに、喋りつづけた。
後日、この「辞めよ」の経緯を
周りの人々の口の端から聞けば、
概略、以下の通り。
「社長が、(わしの)女房のことを悪く言うんよ。
わしの事なら兎も角、女房の悪口を言われたわしは腹が立って、
わしも、(社長の)息子の悪口を言うたんヨ。
そしたら、突然、社長がわしに『辞めよ』と言うんで、
わしも『社長こそ辞めよ!』というて、
社長室を飛び出したその足で、家に帰って、
酒を飲んで寝たんやけど…。
どうにも、腹が立って、眠れんかったけん、
皆に、わしの胸の内を聞いてもらいたかったんよ」。
ちなみに、周りの話から推察するに、
Aさんのご妻女は、(生命)保険の外交員をしておられた。
一方、Aさんは勤め先に新人が入る都度、
その情報をご妻女に漏らした。
その情報を基に、ご妻女はAさんが勤める企業に、
足繁く通った。
そんなご妻女の姿・行動を見て、快く思わない社員の一人、
Aさんの部下が、オーナー社長に直訴した。
これらの情報を基に、社長はご妻女の件を持ち出して、
Aさんを諌めた。
それに対して、Aさんは日頃から快く思っていなかった
(社長の)息子の言動について、心のたけをぶちまけた。
表面に現れことは、ただそれだけのことではあったが、
その根の深さやはびこりは、多面的であり、
オーナー社長には、次のような思いや思惑もあった?
・礼儀も尊敬の念も、Aにはちっとも感じらず、
無礼な言動が益々、増長する。この事態を何とかしなければ…。
・息子の代になる前に、わしの責任で、片を付けなければ…。
・わしが居なくなって(他界して)も、
「其他可レ能也そのたはよくすべきなり」、
すなわち、「その他のことは、誰でもできる」が、
Aの去就については、後顧の患いがないよう、
わしが元気なうちに、片付けとかなければ…。
・息子の代になって、「父の臣と父の政を変えた」、
すなわち「父の部下と父のやり方を変えた親不孝な息子」と、
周りの人々から言われないよう、(処置)しとかなければ…。
上記のオーナー社長の思いは、冒頭の経緯を経て、
現実のものとなり、Aさんは当該企業を去って行った。
では、あなたにお伺いします。
「其他可レ能也そのたはよくすべきなり」、
すなわち、「その他のことは、誰でもできる」が、
あなたでなければ、決断を下せない案件には、
どんな経緯や事情がおありなのでしょう。
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